09/01

 蝉の鳴き声を聞かなくなった。僕はあれらの外殻は嫌悪するのだけれど、鳴き声は好きだ。あのミーンミーンという音がすると僕は夏の到来を思い知る。夏という季節を好む僕には、それはとても心地の良いものだ。とするともう夏も終わりなのだろうか。いや、問うまでもない、月は既に9。夏の終わりは火を見るより明らかではないか。そう思いながら火を見ていると、何も無いところで転んで火の中に突っ込んだ。それはさながら愛すべきドジっ子の様相を催していたが、状態は凄惨だ。髪は焦げ、肌は文字通り焼け、甲高く叫び声をあげている。正視にはとても堪えられない。ここで僕は、この状態があるものに似ていることに気付いた。そう、黒人のレゲエダンサー。まさしく瓜二つじゃあないか。しかし、これは自分の経験談だが、黒人のレゲエダンサーになりたいからって火に飛び込むのはやめた方が、いい。胡瓜に蜂蜜をかけてもメロンなんかになりはしない。\




09/04

「デートのとき相手の鞄を持ちますか」
「相手ごと持つ」




09/07

「俺のどこを好きになったの?」
「えっ……な、なによ、突然」
「いや、なんかそういうのって気になって」
「え、えっとね、なんていうか、保田君、他の人とは違う雰囲気があるっていうか……どれか一つをとってどう、ってわけじゃないんだけど、喋ることも他の人とは違ってて、そういうとこに惹かれて……あ、ご、ごめんねっ。こんなわけのわからないこと言って。私何言ってんだろ、あはは」

「――友人の話なんだけど。そいつ、ヒッチハイクをしようとしてたんだって。でもやっぱ中々止まるもんじゃないらしくて。30分ぐらいそうやって親指挙げながら待ってたら、車が止まったらしいんだよ。そいつは嬉しくて運転手に話しかけようとした。でもよく見たらその車、タクシーだったんだって――」

「……保田君って普通の話、するんだね……」
「そりゃあそうさ。こないだなんて信号機の緑が青と称されることに不平を洩らしていたんだぜ」




09/08

 あの女子の「くしゅん」という可愛らしい、くしゃみ。あれはあれか、女にだけ伝わる秘伝の技か。門外不出の秘儀か。僕らが「はっぐじゅん!」と醜い限りの声をあげ、貴女達は可愛らしい音で人目を引く。世界はつまりはそういう図式なのか。貴女が人前で鼻をほじると、僕らは指を差して笑うのか。人目のあるところで鼻をほじる女子も女子だけどそれを指差して笑うのもどうかと思わないか。




09/10

 僕が文章を書き、貴方がそれを読み、ときどきねぎらいや交わりのメールを送る。もうそんな関係には飽き飽きしていたんだ。たまには別の関係があったっていいと思う。貴方がねぎらいのメールを送り、僕がそれを読む。それは実はネギとライ麦畑のメールで、僕は遠く離れた故郷を思い返す。頬にあたるそよ風、一面に広がるネギ畑とライ麦畑、そして彼女、ジェーン。僕はもう暫く、戦に身を委ねてしまっているけれど、君のことを忘れた日はない。本当だ。でも、君と交わした約束は守れそうにない。何故なら僕は出撃前に君のことを戦友に話してしまった。無事帰ったら結婚することさえも。それは世界の理だから。だから、僕はもう帰れない。君の、あの顔を見ることも叶わない。君は泣きボクロが欲しいからといって鼻糞を目下に付けていたね。あれはあんまりだと思う。君は僕や世界に仇為していた。




09/17

 普通にメールを送っただけなのに「ごめん、面白い返事ができなかった」と謝られ、自分にとってコミュニケーションが如何に困難なものであるかを思い知らされました。




09/17

〜 シンデレラ 〜

 「きゃっ☆ もうこんな時間! 行かなくちゃ!」 シンデレラは短針と長針が12に差しかかった時計を見るや否や、颯爽と王子の手を離れて城を出て行きました。呆気に取られた王子も、事態を理解するとすぐに追いかけていきます。「名も知らぬ麗しき貴女! 一体どうされたのですか!」 そんな王子の声も届かないのか、シンデレラはあっという間に闇の中に消えてしまいます。呆然とシンデレラが消えていった方向を見つめる王子でしたが、足元に何か落ちているのに気付きました。「これは……」 なんとそこには、先程までシンデレラが履いていた竹馬が落ちていたのでした。シンデレラは急ぐあまり、竹馬を落としていってしまったのです。「これが彼女を探す手掛かりになるかも知れない……」 彼女を探す決意を固める王子でしたが、そこに村一番の猟師、柳田厳蔵(67)が現れ、王子をヒグマと間違えて撃ち殺してしまいました。




09/20

 だりー。あまりのダルさにコンビニで何も商品を持たずにレジの前に立って「チッ」と舌打ちして出ていきました。もう二度とあそこのコンビニ行けないよ。どうしよう。謝ってこようか。そう思い立って謝ったのに「そんなこと言われても困ります」と少し怒り口調で言われた。不可解ですね。底辺×高さ÷2=三角形の面積。不可解ですね。いやこんな式使っても本当は三角形の面積なんか出ないんだよ。本当は宝の地図が出るだけ。でもそれを知られたくないから政府はこれを三角形の面積の公式だと言っているだけなんだ。でも僕は知ってしまった。そして出てきた座標の場所に行って掘ってみた。何も出てこなかった。やっぱり政府は正しかったんだ。僕は政府に許されない叛逆行為を犯してしまった。どうしよう。謝ってこようか。そう思い立って市役所に行って謝ってきたのに「そんなこと言われても困ります」と少し怒り口調で言われた。不可解ですね。




09/22

 明日なにやら待ち合わせをさせられることになったのですが、どうにか遅刻しない方法はないかと悩んでいる次第であります。今度の相手はそんなに気安い仲ではないというか、3時間遅刻して「ごめーん、待ったぁ?」で済む間柄ではないのでして、僕としても必死に遅刻しない方法を考えなくてはなりません。しかし考えれば考えるほど道がどんどんと閉ざされてるように思えてきます。今まで幾度遅刻しないように試行錯誤してきたか、そしてその努力が何度無為に終わってしまったか。それらを省みれば明らかと言えるでしょう。でも僕は悩みに悩みました。その長い苦悩の結果、遅刻しない最良の方法は「行かない」だと僕の脳ははじき出しました。発想の逆転ですね。大体俺が遅刻するのもネットのおもしろサイトを見てるからなんだから気を遣って明日は全員更新しないとかブックマークを俺から隠すとかどうにかするべきなんじゃないですか。お前らもちょっとは努力してください。




09/23

 いや初見の人が来た途端黙り込むのは自分でも感じ悪いと思いますけど。その人が格好良くて話し上手で美容師の卵(孵化後は美容院)だなんてくれば僕はひたすら黙って脈でも数えるしかないじゃないですか。いーち、にーぃ、さーん、もーいーかーい。まーだだよー。もーいーかーい。もーいーよー。(リストカット) 今レイモンド・チャンドラーをハードボイルドものだと聞いて読んでるんですがいつまで経っても「少しでも動けばこいつが火を吹いてお前の頭からケチャップを撒き散らすぜ」「ホットドッグを食うときに困らなくなるな」という科白が出てきません。どうしよう。




09/26

「クソッ、なんでいっつもこうなるんだ……」
「元気出しなさいよ。人生、これからじゃないの」
「わかった風な口を利くな! お前には俺の気持ちはわからない!」
「……そうね、私には貴方の気持ちも、机の気持ちも、椅子の気持ちも、チョークの気持ちも、黒板の気持ちも、教壇の気持ちも、黒板消しの気持ちもわからない……。でも花瓶の気持ちはわかる。あの子はいつも自分の身に土と花を入れられ、苦悩している……とても苦しいけれど、何度投げ出そうと思ったか知れないけれど、それを自分の使命だと思ってじっと堪えているのよ。私はあれほど強いものを知らないわ……」
「そ、そうだったのか……! 俺はてっきり、煌びやかな花を我が身に添えて調子に乗ってるばかりの奴だと思っていた……。俺はなんて、なんて思い違いを……」
「いいのよ、間違いは誰にだってあるわ」




09/27

 「花瓶に土は入れないんじゃないか?」という指摘を総計二名の方から頂きました。このような憂慮をされるのは至極当然のこととは思われますが、僕が昔居た土地、千葉では花瓶に土を入れておりました。この慣習は花瓶で人の頭をかち割る際に、よりかち割り易いようにと工夫を込められ成立した事柄であります。給食の各々のご飯の量で流血沙汰が起こる土地ならではの、当然の帰結と言えるでしょう。このような慣習が存在することに皆様は驚きの念を隠しきれないとは思いますが、真っ赤な嘘なので貴方がたが信じて人から冷笑を買おうがこちらとしては別にどうでもいいです。あとこの誤謬に気付きながらもただ冷笑しつづけた人達はファッションのためにわざと部分的に色落ちさせたジーンズを手にとって「これ中古ですか? 汚れてるんで値引きしてください」と店員に申し付けてください。当サイトはいつでも貴方がたの不幸を心から願っています。




back