RNAに対して連戦連敗中のDNAの状況を重く見たフレッシュ・リフォー(通称FR-08)は
配下の各プラントに新型VRの開発を解禁したが、その提示した条件は決して旨味の
ある話ではなかった事や、FR-08のかねてからの高圧的な態度に反感を抱いていた
事がマイナス要因として作用し、呼びかけに呼応したプラントは第7プラントと
第5プラント…デッドリーダッドリーだけだった。

第5プラント デッドリー・ダッドリー(通称DD-05)は、月面背側上空の
静止衛星軌道上に位置する巨大なターミナル・プラントを根拠地としており
どちらかといえば辺境の組織だった。
ここにはかつて開発コストの高騰によって不遇の運命を辿ったHBV-05(旧型ライデン)の
開発に従事した関係者が多く流れ着いていた。旧型ライデンの最終的な失敗によって
更迭という形でDD-05に送られた開発者達には、その後満足な融資も受けられずに
維持費にも事欠く苦しい財政状態が待っていた。FR-08が提示した条件が決して
好意的なものではなかったにも拘わらず、DD-05が話に乗ったのはこのためである。

DD-05は、今までの不運からの再起を期して、VRの開発に全力で取り組んだ。
幸いDD-05は「弱小プラント」というレッテルから、禁止令の出る中公然と行っていた
VR開発の基礎研究は、FR-08から「考慮に値せず」との評価を受けて、特に
お咎めなく順調に進行していたのである。この間に培われた技術ノウハウのレベルは
非常に高く、VR開発を始めた他のプラントが苦しんだ技術的ギャップは、事実上
彼らには存在しなかった。

結果、彼らは周囲の予想を覆し、他のプラントに先駆けて第二世代型VRを開発、
実用化する事に成功したのである。彼らは完成した機体に再興の夢を託して
再び「ライデン」の名称を冠し、ある手段(※)を使い、大々的にその能力をアピールした。
窮地にあったDNAは、藁にもすがる思いで真っ先にHBV-502として正式採用し
RNAとの実戦に即時導入した。だが、この思わぬ事態の進展は、FR-08にとって
決して歓迎すべき状況ではなかった。

DD-05はその後、巻き返しを狙って精力的に新型機の売り込みを行った。
しかしここでFR-08の提示する公開流通ルートに乗る事を快しとせず、独自の
販売戦略をとったDD-05は、DNAだけでなくRNAにも製品を売り込んだのである。
この性急なスタンスは結果的に彼らの破滅を早めてしまったのである。
FR-08に疎まれてしまったDD-05は、様々な妨害工作や策略に翻弄され、
あろう事か彼らの根拠地であるターミナル・プラントがDNAとRNAによる
抗争の主舞台として国際戦争公司に運営権を移行されてしまい、戦場として
激戦が繰り広げられるようになってしまった。数次に亘る戦闘は熾烈を極め、
プラントは破壊されていった。かつて壮麗さを誇った巨大なプラント施設は
灰燼に帰し、人々はDD-05の悲劇的な末路を悼んだ。やがて、その廃墟は
”Unholy Cathedral(不浄なる大聖堂)”と呼ばれるようになり
そこへの出入りは忌むべきものとして差し控えられる事になった。

FR-08によるDD-05の抹殺は、各方面に様々な波紋を投げかけた。またFR-08
自身にとっても、VRの有力な供給源を失った事は結果的に大きな痛手となり、
特にDNAとRNAとの抗争に際しては、イニシアチブをとることが徐々に困難になっていった。

(※)ホビージャパンに連載されていた「ワンマンレスキュー」最終話を指す。
   RNAの大部隊に襲撃を受け絶体絶命の窮地にあったS.H.B.V.D.(特殊重戦闘VR大隊)の
   ミミー・サルペン達を、ピアゾ・バイモルフの駆る「試型雷電」がたった一機で
   救出し(=ワンマンレスキュー)、RNA部隊を撃退した。

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