著書紹介



サービス・クォリティ  千倉書房

 サービス・クォリティは新しくて古い問題である。サービス経済化が叫ばれ始めてから、多くの研究者がこの問題にアプローチしてきた。サービス・マーケティングという研究分野は、米国では70年代に基礎的な研究が80年代に実務家を含めたより理論的、実践的研究が進展した。

 そこで、認識されたのはモノのマーケティングとは違って品質をどの様に規定し、それを消費者に知らせるのかという課題にマーケティング主体が応えられるかということである。それが実現できなければ優れたサービスの市場投入に大きな障害となり、ひいてはサービス経済化した先進国経済の発展が望めないということである。

 90年代にはいると、サービス・クォリティを測定し改善するための実践的な試みが様々になされ、その結果が解釈されてきた。SEVQUALもその尺度の一つであり、多くの研究者によって批判、検討がなされてきた。本書では、こうした理論的発展の経緯を中心にサービス・マーケティング研究の中でサービス・クォリティ研究が置かれている位置を検討している。

 本書の後半では、サービス・クォリティが形成される過程を消費者情報処理理論を基礎として実証的な研究を加えている。特に知覚リスクが与えるコミュニケーション手段の変化、消費者関与による情報取得の変化が中心課題となっている。その結果として外在的手がかりと呼ばれる手がかりの中でもビジュアルな手がかりが、サービス・クォリティの形成に重要な役割を持つことを明らかにしている。

 ただし、最寄品、買回り品といった製品の購買特性による違いも大きな影響をしており、サービス製品の特性も考慮されなければならないことも指摘された。

 目次

 序章
 1章 サービス分類と製品論
 2章 品質評価の測定と構造
 3章 知覚リスクとサービス消費
 4章 知覚品質の形成と情報取得行動
 結章
 

「日本型都市ホテルの営業革新」 日本型マーケティング、千倉書房

 日本の都市ホテルは、特異な経緯を取って成立した豪華で大型のホテルである。その成立には、法人需要を前提とした企業グループが深く係わってきた。それぞれの企業グループの威信を懸けた豪華ホテルはしばしば採算性を無視しして運営されてきた。本論文では、法人営業の限界を感じながらそれを改革しようとする3つのホテルを取り上げてその試みを検討している。

 まず、外資系ホテルとして取り上げたハイヤット・リージェンシー・オーサカでは、欧米型のホテル経営の典型例として計数管理とキャパシティ管理を中心としたホテル・マネジメントの実態を解説している。特にGMと呼ばれる支配人に意思決定権限を集中して、市場の変化に大胆に対応する姿を記述している。一方、大阪の老舗ホテルであるリーガ・ロイヤルホテルでは、銀行から来た経営者の下で法人営業の再活性化と営業組織への計数管理を強化している。

 一方で、立地を変更したホテル阪神では、従来の電鉄系列のホテルにありがちであった法人営業を前提としたホテルマネジメントのスタイルを捨てて、地域密着型ホテルとして再生しようとしている。そこでは、地域の需要に合わせた価格設定と運用システムを工夫している。従来の法人需要依存からの脱却を目指す、それぞれのホテルの戦略を検討することでサービス・マーケティングの新たな問題点を浮き彫りしている。


「適応的意思決定と選択行動」 
 消費者行動研究のニュー・ディレクションズ、関西学院大学出版会


 「適応的意思決定の理論」に加筆したもの。IDB法を使った意思決定過程の追跡における選択肢の数が複雑さを高め、意思決定者に負担となることを示した。


金融リテール改革 千倉書房

 ペイオフ解禁という金融ビッグバンを目前にして、金融機関はさらなる対応に追われている。度重なる合併によって規模の拡大を目指してきた銀行の戦略は、果たして効を奏するのだろうか。

 本書では、銀行の顧客基盤が脆弱であり、差別化された収益性の高い製品が不足しており、直接金融の発達から対企業市場が縮小する中で有効なリテール戦略を打ち出せないでいる。本書では、主に3,4章を担当している。

 3章 必要なオペレーション改革
 サービス・オペレーションは顧客を含む概念である。サービス・オペレーションの分類である、サービス工場、サービスショップ、マスサービス、専門サービスの4つの類型と、「サービス・オペレーションの構造を考慮した戦略分類」に依拠した4つの分類を使って銀行のオペレーションの分類を試みた。
 その結果、低コストの顧客に集中する戦略と多くのサービスを必要とする顧客の獲得が必要であることを示した。
 4章 都銀の生き残り戦略
 「リテールバンキングの顧客セグメント」に加筆修正したもの。地方と都市部での競争環境の違いを明確にした。
 


|戻る|