臭い果物

私は食べず嫌いという行為を許せません。自分の舌で味わわずして食べられないと判断することを恥とさえ思っています。しかし、この心意気が時として失敗を招く事もあることも知っています。

失敗を招いた食べ物。それは果物の王様「ドリアン」です。

私の通っていた大学には多くの留学生が在籍しており、東南アジアからの留学生も少なくありませんでした。時折不思議な食べ物をお土産に持ってくる彼等から、ドリアンを貰ったのも必然だったのでしょう。

流石に生のドリアンではなく、ペースト状になったドリアンでした。ドリアンは臭い。

そう見聞きしていましたが、

「臭いって言っても人が食うくらいやからなー」

そう、思っていました。これは私の勘違いでした。その香りは凄まじく、鼻が曲るかと思う程の「ドブの香り」をドリアンペーストは大気中に放っていました。この時、食べず嫌いでも構わんとさえ思いました。プライドを捨てようとしたのです。

しかし、口に入れました。なんで入れたのか分りませんが、口に放り込んだのです。凄まじい臭いは口から鼻に抜け、一瞬喉の奥に熱いものが込み上げてきそうになりました。吐きそうになるのを我慢して飲み込んだ私は、

「ドリアン恐るべし。二度と食わん」

と心に固く誓いました。ちなみに味はカボチャクリ等に似た大変甘いものです。味ははっきり言って良かったです。臭いさえなければ・・・。


ドリアンは私の心を深く傷つけました。果物の王様と呼ばれるからにはきっと臭いを超越した美味しさを提供してくれるものと考えていたからです。

1999年12月31日、私は釣りの帰りに寄ったサービスエリアにてこの悪魔の果物に再会しました。かれはドリアンチップスなるスナック菓子になり私の前に現れたのです。

かつて全く歯が立たず、ただただ敗北させられた果物の王の無惨な姿は私に誓いを忘れさせました。手を伸ばしレジへ持って行き、金を払い家へ持って帰りました。

はたしてドリアンチップスは臭いのか?また、私は敗北するのでしょうか?

待て、次回。