八重洲無線 400ライン
(FRDX−400、FLDX−400、SP−400、FTV−650)

他社に先行して、SSBに特化して商品化を進めていた八重洲無線(現バーテックススタンダード)が1967年に放ったHFのSSB送信機/受信機のラインの決定版とも言えるものです。この時期に海外製に対抗できたのは、このラインとFTDX−400ぐらいでしょう。この前の商品として、FR/FL−100(送信機には20/200のバリエーションがあった)のラインがありましたが、FTDX−400と同じイメージに外見を一新し、回路とアクセサリーをリファインしたものです。周波数構成は前述の100ラインと変更が無く、それぞれ下記のように強化されています。
共通(デザイン以外)
1) ギアダイアル:1回転100KHzだったものが、
50KHz−>25KHz−>約16KHzへと進化
 (最終的に、FT−401/101系と同じダイアルメカになっています。このメカを最初に使ったのは、スター系のFT−200だと思います。初期のFTDX−400は似ていますが、少し異なったメカを使っていました。)
FLDX−400(送信機はあまり進歩していないことが判ります。)
1) 終段を6JS6パラにして、240W入力となった。
 (FTDX−400が6KD6なのに6JS6にしたのは、トランシーバが1台での完結出力性能が要求されたのに対し、送受信機セパレートでは必要なものは外付けすれば良いとの考えと思われます。)
2) 10mがバンドいっぱい出せるようになった。
FRDX−400
1) VFOのFET化
2) 1stミキサー回路の変更(FR−100は7極管ミキサー)
3) ノッチフィルターの装備
この後の商品では、FT−301にノッチが再登場するまで、混信除去機能は姿を消します。
4) 160m追加
5) オプション対応
(ア) 6m/2mコンバータ
(イ) FM検波
(ウ) 固定チャネル
さらに、FT−400/401と共通ですが、
リニアアンプ
100ラインでは、FL−1000と言う6JS6を4本パラにしたアンプがありましたが、400ラインでは、6KD6を4パラのFLDX−2000が準備されました。その後、572Bx2のFL−2000Bが発売されます。
トランスバータ
遅れてFTV650が発売されますが、メーカーとしてVHFのSSB化の先鞭をつけたのは、SSBの八重洲の面目躍如ですね。送信機やトランシーバのアクセサリー端子から電源供給できることが、トランスバータの回路を簡単にしています。おかげで自作のトランスバータも付けやすかったものです。


この商品が登場した当時、競合となるのは、既に古くてまったく非力なTRIOのJR−300/TX−388(通称ゴリラライン)か、後に会社を吸収するスターの700ラインですから、まあ独壇場ですね。TRIOが1969年に半導体化を前面に打ち出した("IC+FET"なんて表記されています。)599ライン(別に紹介します)を出しますが、大きさと安定性以外は負けていなかったように思えます。特に受信機の基本性能は当時の国産品としては最高レベルだったと感じます。
TRIOは少し後の1968年にモノバンドシリーズと言う、ちょっとしたゲテモノを出していますが(使ったことがあります。)、下位機種の50ラインの競合にも400ラインの競合にもなりませんでした。

ここにお見せする実物は、1976年から80年頃に実際に使っていたものです。599ラインからの時代逆行型の乗り換え(併用)をしました。若気の至り、ラグチューをしながら、ダイアルパネルをマジックで黒く塗っています。
FRDX−400は、ハイバンドでは、ノイズブランカーがないのが少々つらかったですが、ローバンドでは文句なしでした。文句なし、と言いながら、下記の改造(改悪)を入れています。
1) CWの簡易ナローフィルターを追加(FR−100Bからのパクリ)して、メカフィルと合わせて選択度の改善をしています。
2) CW用のBFOとして、自励発信回路を追加(今で言うCWピッチです。)
(標準のBFOでは、1.5KHzのキンキンCWを聴く事になるので)
3) スクリーン電源回路の安定化
4) プリセレクターチューニングの微動ダイアル化

送信機は改造していません。
別の問題点として、CWのモニターはサイドトーンではなく、送信電波を受信機でモニターするだけなので、周波数がずれるとモニターできませんでした。縦振り以外では、外付けのモニターが必須でした。

前にあるのは、八重洲ブランドのプリモ製スタンドマイク"YD−844"です。
ついでに、前機種のFL−100Bの現物(これも改悪ばっかり)もご紹介しておきますが、詳細は省かせていただきます。