TRIO TS−510
SSBに対して、JR−300S+TX−388やTS−500、あるいは少々ゲテモノのモノバンドシリーズなど今ひとつのSSB商品しか発売していなかったトリオ(現ケンウッド)が満を持して1968年に発売したトランシーバです。この商品から周波数構成などHEATHの影響が感じられます。
発売時のセールスポイントは、"高安定のVFO"でして、発表された回路図のVFO部分が"実用新案申請中"と空白になっていたのが印象的でした。後にSSBハンドブック(だった?)にポロッと回路図が掲載され、意外にオーソドックスなものでした。次のセールスポイントは"増幅型ALC"によるきれいなSSB音と言うものでしたが、実際の影響は別にして、八重洲の音、トリオの音を印象付けるものでした。TV球vs6146(S2001)、増幅型ALCの効用など、トリオ派vs八重洲派の様相でCQ誌上で大きな話題となったものです。
斬新な付加機能も無く全体として(モノバンドシリーズのような)奇をてらったところがないSSBトランシーバの基本とも言える設計で、基本的な構成はTS−520まで受け継がれました。ハイバンドがややゲイン不足であることを除けば、今でも十分使えます。
JARL認定と言う制度はすでに存在したのですが、100WクラスのSSBトランシーバが一般化するに伴い問題視され、発売時から明確に10W出力である機種が望まれることになりました。そのため、添付したカタログにあるように途中から"JARL認定対象機種"とうたったTS−510Xが設定されました。
このころの八重洲のJARL認定対象機種がFT−400Sです。
10W機に、トリオは"X"、八重洲は"S"をつけることになった最初です。
写真のものは、本体がTS−510(XもDもSも無いパネルに直接印字)、電源がPS−510D(パネルに貼り付け)です。
高校生のころ、同級の知人がこれを持っていて、非常にうらやましかったものです。文化祭などでは借りて使わせていただきました。また、相当売れたと見え、70年代前半、ローカル局が多数使っていました。対して、私はFT−401Sでした。
TRIO TS−801
トリオはTS−510の下位シリーズとして、すぐ後に310ラインを発売していました。(八重洲は50Bラインでした)。しかし、世の中の流れとして比較的安価なSSBトランシーバが求められ、トリオとしては、コスト的な課題からか、同世代のTS−511ではなくTS−510から付属回路を省略し10W専用のTS−311を発売しました。さらに、トリオにはモービル対応機種が無かったためか、このTS−801を追加発売しています。
TS−801はTS−311に次の回路/機能を追加して、モービルでも使えるようにしたものです。
・ DC−DCコンバータ
・ ノイズブランカー
・ ダイアルロック
・ 角の取れたデザイン
私自身は実際の運用で使ったことは無いのですが、超ローカルのJH3T** お医者さんのM先生がこの機種を使われていて、達者なロシア語でUゾーン(古い表現ですね)と盛んにQSOされていたのが思い出されます。
モービル用としての狙いはあったのでしょうが、FT−75やライナーシリーズほど徹底されていなく、本格的にはFT−101があり、モービル用としてはあまり売れなかったのではないでしょうか。どちらかと言えば、TS−311よりデザインが良いノイズブランカーつきのトランシーバと言う感じでした。