居眠り 

風呂上り。
さっきまでそこでテレビの前に陣取っていたアリスの姿がない。
と、思ったら。
こたつから首だけ出して、居眠りモードだ。
「なんだ…ドラマを見るからって頑張ってたんじゃなかったのか? おい、アリス? こんなとこで寝てたら風邪ひくぞ」 
 ゆすってやると。
「ん?…あれっ…火村???」
 すっかり寝ぼけた声が返された。
「風呂どうする? もう、寝るか?」
「ん。九時からのドラマ見てから…」
「何言ってんだよ、もう十時前だぜ」
「え? うそっ!」
「本当」
「なんで起こしてくれへんねん!!!!」
 すっかり目が覚めた様子でアリスは怒り出す。
「何でって言われても…風呂入ってたし」
「どうして一時間も入るんやぁぁぁ」
「…そう言われても、本読んでたし…」
「せっかく楽しみにしてたのにぃ。どうなったんや、一体?」
 掴みかからんばかりの勢いでくってかかってこられても。
「俺が知るわけないだろう」
「意地悪っ! あぁ、もう…気になって眠れへんやんか!」
 がしがしと髪をかいているアリスは八つ当たりをしてくるけれど、なんで俺が責められなくてはいかないのか、全く合点がいかない。こっちの方が腹たってくる。
「…わかった、わかった。じゃ、寝かしてやるよ」
「無理にきまってる。いくら火村が推理の名人でもドラマのストーリーまでは無理やって」
「違うよ、そんなの思い出せないくらいにしてやるって事さ」
「へ?」
「俺らしい方法で、な」

…それが何かは…ご想像に任せよう。
ま、その通りのことだ(笑)

居眠り(その2) 

呼ばれたように目が醒めた
きょろきょろと見回してみても誰もいない。
「気のせいかな…?」
 それにしてはリアルな感覚。
 ふわふわと揺すられるような感じもアリスって囁く声も、とっても気持ちよかったのに…。
「…うーん。もったいない」
 あれが夢だったのなら、絶対続きはイイコトできてたろうに…。
 無論、現実の方が嬉しいのはやまやま…。
 でも、居ないものは居ないから。せめて。
「続き…見よう」
 
 ふわふわと漂うようにこたつからベッドへと場所をうつして、アリスは再び夢の中。
 

「…なんだよ、いつのまにこっちきたんだ?…心配するだろうが」
 湯気を立てたまま潜り込むと。
「…んっ…あったかい…」
 気配を察したのかすかさず転がり込んでくる。
「おい、くっついたら襲っちまうぞ…アリス? 俺は湯たんぽか??」
 尋ねても、決して開かない瞳。
 穏かな寝息を胸元に聞きながら火村も静かに目を閉じた