【2階はナニをする人ぞ…】

 さーて、ご飯も食べたし…2階へゴー。
 勢いよく走り出したあたしの前に立ちふさがった影。
「なんやのー。じゃまですー、どいてー!!!」
 腹たち紛れに大声を出すと。
「おや、お嬢ちゃん。上行くつもりやったんかー?」
 なんて、うりさんったらのーんびりした声で言ってくれちゃって…。
「そーよ。二階で火村センセと遊ぶんだもーん。だから、どいてっ!」
 だってーおばあちゃんは縁側でうとうとだから、せっかく昼間っから先生がいるなら遊んで欲しいって思うもの。それに、うりさんや、コジさんは食後は休憩とかって相手してくれないって知ってるもん。あたし…。でも、普段ならあたしのわがままを通してくれるはずのうりさんなのに、ふるふるって首を振るだけ。
「ちょっとー。どいて下さいってばー」
「あかんって、止めとき。桃ちゃん」
 コジさんまで後ろから、そんな声をかける。
「なんでー、いいやん。行くったら行くのーーー、うわぁっ、何すんのーぉぉぉ!」
 強行突破をかけようとしたら、尻尾ひっぱられて転がり落ちてもうたわ…。
「ちょっ、何すんのー。ひどいーー」
 あたしでなかったらぜーったいケガしてるわーと抗議をしても、うりさんやコジさんったら笑うだけやもん。
 失礼しちゃう…。
「もー、イジワルやわ! 火村センセに言いつけたるー」
 囲まれてた隙をひょいっと抜けようとしたら、またひっ捕まえられた。
「あかんて、桃ちゃん」
「今、2階は立ち入り禁止やから」
 二人(?)して、女の子にのしかかってなんやっていうのよぉ! ぷんぷんぷん!
「いやーん、なんでー、そんないけずばっかりするのーーー!!!」
 悔しくって泣いてやるーって感じ。
「いってもあかんねんって。今は、アリスいてるやろー」
「相手になんかしてもらわれへんでー」
「それどころか…追い返されるってー」
「アリスに触れるだけで怒るんやで、センセ」
「俺なんか、前に二人の間に入ろうとしたら蹴飛ばされたでー」
「爪たてたらハダカやから危ないってどなりはるしなー」
「そうや、だーかーら、もうちょっと待ち」
「そうそう、そのうちな…何の音もせんようになってからやったら、センセ別人みたいにゴキゲンさんやから」
「ほんま、なんかすーっきりした顔してはるで」
「うん。アリスは風邪引きさんみたいやけどなー」
「目ぇもアレルギーかもしれんでー。真っ赤やし」などなど。
 入れ替わり、立ち代わり…まくしたてられて…。
 ???????
あたしには、さーっぱりわかんない…。
「ねーねー、アリスって何? おいしいのそれ?」
 じたばたするのを止めて尋ねると二人ともさっとどいてくれた。
「そーかー。桃ちゃん、アリス初めてやねんなー」
「うん」
「さっき、挨拶していったの見てへんかったー?」
「うん、おばあちゃんと台所にいたもん」
 そーだよー。なんか羽のあるごそごそするの、捕まえたげたんだもーん。
「そーかー。えっとね…アリスはね。センセと同じで人間やけど。先生よりふわふわしてるー」
「うん。センセとちごうて髪の毛真っ黒やでー」
「せんせとちごーて、ぜーんぜん歳とれへんしなぁ」
 ふーん。どんなんやろう。
 見て見たいなぁ、はやく…。
 あたしがこの家の娘になってから、家の中におばあちゃんと火村センセ以外の人間なんて居たことないんだもん。
「でも、どーしてそんな見た事のない人のためにあたしが我慢しなきゃいけないんやろー」
 ポロって零れた言葉に、うりさんがチッチッと首を振る。
「俺がこの家に来た時から、アリスはセンセとおんねんから。しゃあないって」
「そうなのー」
 って事は、アリスの縄張りに入れてもらってるって事やからー。ここは猫流にちゃんと待たねば…ってとこやのね。
「でも、アリスも俺らの事可愛がってくれるよ。ただ、あんまり俺らの事ばっかり構ってたらせんせがコワーイ顔するしー」
「ふーん。そうやのー」
「ま、そういう事でちょっと我慢や、桃ちゃん」
「うん。そしたら、おばあちゃんとこでお昼寝するのー」
「俺も行くー」
「じゃ、皆でひなたぼっこして待とかー」
「うん!」
 ようやく、話がまとまってみんなでおばあちゃんのとこへ。
「おやおや、なんか騒がしかったけど、喧嘩でもしてたん?」
 そういって喉をさすってくれるおばあちゃんのおひざの上は、ぽかぽかでとーっても気持ちよかったからあたしもすぐ寝ちゃった。

 あ、そうそう。
 起きてから、思い出したみたいにうりさんが言ったの。
「あ、でも…そういえば。アリスはおいしいかもしれへんで」
「そーなの?」
「だってほら、センセよくいってるやん。ごちそう様とか、甘かったとかー」
「そういうたらアリスはセンセに苦いっていってるなぁ…」
「ふーん。舐めたらわかるかなぁ?」
「うーん、でもセンセ、苦くないやんかー?」
「ほんまやなぁ…」
 とーっても不思議だから、後で突撃したらみんなでなめなめすることにしてんけどー。
 なんだかたのしみー。わくわくー。
 もう、行ってもいいかなぁ?


というわけで…ニコラ屋さん・容量不足のための出戻り小説でーす。
いけいけ、モモちゃん! GOだぜ、モモちゃん!
私も、いっしょに覗きに行きたい!!!