2月4日深夜2時

きゅぃぃ〜…
かすかな音が鳴った。
こんな時刻にもなると、小さな音でもよく響く。
ガラスを隔てた部屋の中は無人だ。
焦ることはない。
しかし、ここで悠長にしてても、気配に鋭い家主代理に見つかる可能性がある。
隣の部屋で暢気に寝ている客(扱いは犬以下だが)を起こすかもしれない。
音を鳴らした犯人は、なおのこと慎重に迅速に円を描く。
円に切り取られたガラスを取り外し、鍵を開ける。
ゆるゆると窓を開け、そっと降り立つ。
そろそろと一歩足を踏み出し・・・
「うげっ!!」
ばさばさっという大きな音と、押しつぶされた蛙のような声をあげてこけた。
後頭部を手で押さえながら、暗い部屋の中、目をこらして足元を見ると、本が散乱している。
『何だッ!?』
ドアを開け放つ音が2つ聞こえ、同時に相手を罵る声がした後
犯人が入ったこの部屋の前で家主代理と客が合流していた。
犯人は潔く腹をくくった。

ー誰だっ!!
ーここにおんのはわかってんねん。おとなしく出てきたらどうや。
ー……や、やぁ、今日も月が綺麗だな〜(潔く?)
ー…てめぇ・・・
ー黒羽ぁ?何やってんねん、自分。
ーお月見だよ、お月見。部屋が暗いほうがよく見えっだろ。
ーあぁっっ!!??
ーどないしたっ、工藤
ーお前、この窓っっ!!
ー(ぎくぎくぅ)あれぇ、その窓穴が開いてるんだな。斬新なデザインの窓だなぁ、有希子さんの趣味?
ー……こんなデザインの窓あるわけないやん。
ーいくらなんでも、かあさんの趣味でもとうさんの趣味でもねぇよ。てめぇが開けたんだろっ!
ーだって、窓の鍵閉まってんだもん。
ー黒羽の技量やったら窓から強引にやなくても玄関から入れたやろ。
ー……鰯刺さったまま…(ぼそ)
ーあ〜、なるほど。(ポム)
ーくっそ〜どうしてくれんだよ。この窓
ーいいじゃん、わざわざ名探偵の家に泥棒に入ろうとするやつなんていないよ。
ー泥棒はてめぇだ。
ーはははは、そういえばそうだ。
ー笑ってごまかすなっ
ーちぇ・・・わかったよ。元にもどしときゃいいんだろ〜?
ーああ、ついでに散らかしたここの部屋も片付けといてくれな。
ー庭掃除もよろしく〜
ー…おいっ。この部屋はもとから散らかってたぞ。庭掃除も俺には関係ねーってっ!!


鬼の受難はまだ続いていたようだ。


何のことはない続き。