シャナのクリスマス   1

 

「アルバイト?」


「うん。、鍛錬の後に少し手伝ってくれない?」


 早朝、いつものように坂井家にやって来たシャナに、庭で出迎えた悠二は言った。


 冬休みも折り返しに入ったばかりの、晴れた日のことである。


「それって何?」


 やはりというか、予想通りのシャナの反応に悠二は苦笑する。

 

 そんな悠二の表情に気が付いたのか、シャナは口を尖らせる。


「知らないものは知らないんだから、しょうがないでしょ!」
「ごめんごめん。簡単に言うと……人の手伝いをして報酬を得るってことかな」

 

「どんな手伝い?」

「ケーキ売りなんだけど……どうかな」

『ケーキ』と聞いてシャナが食い付いた。


「ケーキ? 行く行く!」

 

 条件反射で賛成し、顔には笑みが浮かんでいた。

「うん、それじゃあ――

 

「悠ちゃん、結局行くことにしたの?」
 と、居間の窓から顔を出した千草が、悠二を手招きした。
 何事かと、悠二は千草に駆け寄る。

 

「うん、そうだけど?」


「かあさん今日は、おばさんのところで遅くなるかもしれないけど火の始末は、お願いね?」


「はいはい……

 シャナには聞こえない声で、千草は話を進める。
「甘いお菓子ならシャナちゃんも喜ぶだろうけど、あまり遅くまで遊ぶのは、だめよ?」

 母親の厳しい視線を受けて、自分の判断が間違っていたかもしれないことに気付き、気落ちする悠二。
 そんな息子を見兼ねて、千草は助け舟を出すことにした。
「しょうがないわね。今回は私が一肌脱ぎましょう。シャナちゃんの笑顔は私も見たいし」
「え、どうするの?」
「実はね……


 千草は悠二に耳打ちした。


「そうか、それならシャナも喜ぶかも」


「ほらほら、早く行って来なさい」


 悠二を回れ右させて、千草は背中を押してやる。

 

「行ってらっしゃい」


 悠二たちを送り出した千草は、窓を閉めて台所に戻ると、


「さて、頑張りましょうか」
 キッチンの下から小麦粉を取り出した。

 御崎駅前は、普段よりも多くの人で賑わっていた。


 町中にジングルが鳴り響く・・・・・

 

嬉しそうな悠二が笑いながら

 

「シャナ・・似合うよそのメイド服」

シャナのバイト用衣装は、上から白のネコ耳が付いたカチューシャ

首には、黒いリボン

 

上着は、黒のメイド服に胸からの白エプロン

膝上少しまでスカートにオーバーニーソックス

絶対領域がまぶしい

靴は、黒のエナメル

なぜかお尻に鈴付シッポ

顔には、大きな黒淵メガネ

ぼくは、対象的な普通のサンタ

 

シャナは、頬を真赤にさせながら

「うるさい、うるさいうるさい」

 

ケーキ屋の前の簡易販売所でシャナの大声は、余計に人目を引きサンタ姿の悠二が

シャナの姿をからかうヒマがないほど繁盛した。

 

夕刻には、品物は、完売し はては、

「この前のメイドさんと写真をとってもいいですか?」と撮影会まで始まる盛況ぶりだった。

 

やがて日が沈み、人々は、帰途に付き始める、

 しばらくして、ひと段落してきたシャナが、悠二の所に戻ってきた。


……悠二」


「ん? どうしたシャナ」
 だが、品物がなくなった簡易テーブルの上を見つめたまま微動だにしない。
 何かあったのか、と悠二もテーブルの上を見ると、


「私のケーキがない……
 しょぼくれた声をシャナがあげた。


 やはりシャナの頭の中では『ケーキ=甘い物=食べれる』の構図が出来ていたのだ。

「ないよ」


「なに悠二、知ってて黙ってたの?」


「いや、僕が言いたいのは、売り物の中にシャナが食べれるケーキは、ないよと……
 とは言いつつ、悠二は薄々予感していた。


 だから、今日は八つ当たりされる前に家に帰らなければならない、と。
 そうすれば、シャナの機嫌は良くなるはずだった。
「じゃあほら、早く家に帰ろう?」


……明日の鍛錬は厳しくしてやるわ。アラストール、いいわよね?」
「まぁ、程々にな」


「ははは……


 シャナの有無を言わせぬ声を受けても、アラストールは呆れたように声を返すだけだった。
 実はアラストールは、悠二からとある話を事前に聞いていたので、シャナのお冠状態がすぐに沈静化する事を容易に予想出来ていたのだ。

「ただいまー」
「ちょっと聞いてよ千草! 悠二が……あれ、この匂い」
 坂井家に戻ってすぐに、シャナは悠二を差し置いて居間に向かった。
 その途中で、香ばしい匂いが廊下にまで漂ってきていることに気付く。

「あ……

 そして二人が居間に入ると、テーブルの上作りたてのケーキが置かれていた。

テーブルには、千草が
「今日は、お疲れ様、ご飯も、冷蔵庫にあるので食べておいてね。」

と書置きがしてあった。

 

「シャナご飯の後でケーキを食べようね?」

うれしそうにコクリとうなずくシャナ・・・・

 

食事後  ケーキを食べながら

「シャナおいしい?」

 悠二はシャナの表情を窺う。
 シャナが、ケーキを凝視しながら言った。
……なんかいつもと違う」
 言葉だけ取ってみると否定の様に聞こえるそれは、決して否定の意味を含んではおらず、純粋な疑問から生まれたものだった。

「うん、今まで食べたケーキの中で、一番美味しい、かも」
 シャナの嬉しそうな表情を見た悠二は、

安心したように手を眼前で合わせて安堵の表情をみせた。

「もううすぐ、クリスマスだからね」

「クリスマス?」

 

「ひょっとして

窓辺に近づいて、曇ったガラス越しに外を見て確信する。

「いつの間にか、降り出していたんだ

あまりにもタイミングが良すぎるけれど。
こういう偶然なら素直に喜んでしまおう。
ポッポツに振り出した雪は、溶けずにうっすらとあたりを
白く埋めている。


 プルルルル。
「あら、悠ちゃん。ごめんなさい、おじゃまだったかしら、・・電車が雪で止まってるから今日は、こっちで泊まるは、あとお願いね。。。」

ガシャ
「ツーー」

いっもシャナは、夜僕の部屋で寝るけど改めて考えると緊張するな。

シャナが不思議そうな目でこちらをみてる

「悠二クリスマスて?」

「シャナクリスマス知らないの?」

まあフレイムヘイズにクリスマスをといてもな〜。

「クリスマスはもともと収穫を感謝する冬お祝いだけど宗教的なことも絡まって

今じゃ家族や友人同士が集まって楽しく会食し、プレゼント交換するんだ」

「プレゼント?」

「シャナホントは、イブにプレゼントするんだけどいま渡すね」

「部屋からシャナにプレゼント用オルゴールを手渡した」

シャナは、困った顔をしながら

「悠二私は、悠二にプレゼントを用意してないんだ・・」

「いいよシャナ」

困った顔のシャナに、話しの話題を変えようとバイト先で貰ったシャンパンを

持ち出してのみ始めた。

 

「悠二  これ甘くておいしい。もう1杯」

「もう1杯・もう1杯・もう1杯」

 

 

 

つられて僕も飲み始めた

2人で3本ほど明けた時には、すでにロレツが廻らなくなってきた。

 

悠二  ろう一杯〜

しゃナもうないよ〜

 

「悠二てめぇ、さんざん飲みまくっただろーおわかりもうないろ〜」

しゃナもうないよ〜

「そーか、そりゃ残念にゃら。せっかくお前と飲み直そうと思ったんだろ仕方ねぇ寝ろか」
「!?」
思いもしなかった言葉にぼくは勢い良く振り向くとシャナは手をドアノブに掛けているところだった。
「ちょっと待っ!」
「ん?」

ぼくはその白い腕をおもむろに掴むと自分の胸元に引き寄せる。


「シャナお前も、もうすこし側にいて欲しいんだろ?」


にやりと微笑む。その途端シャナの顔は真っ赤に染まった。

ゆっくりアラストールを胸からはずすと悠二がくれた宝石箱に収めた。

「うん。、悠二、、、」
「シャナ・・・」

2人のシルエットがやがて一つに重なる

 

     Fin

 

 

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    続く