■ 冬のプロローグ 3   (東  月乃  )

 

 

「ど……どのようなご用件で。」

《まさか……まさか……東さん……告白……


明らかに胸が高まり動揺している月乃に和馬はあっさりと答える。

 


「新作パンのことで 是非協力して ほしいんじゃ。」


「え……?」

 

東さん!ひど……いいえ、それでこそ私が想う東さんですわ。
・・・・・・・

と思いつつ 、なかば納得なかば呆れながら

車を走らせ、工房へ付くと少し期待しつつ運転手を先に帰らせた。

 

工房に入ると、

 

 

 

「おーい、水乃、早速じゃが 一緒にこのパン生地をこねてほしいんじゃ」


…………..はい東さん。  こうですか」

 

まったくこの人は、人の気も知らないで。


「ん?良く見えねぇぞ。こうじゃ?」

 

一つの生地を2人の手で練る


「今日 月乃の手と繋いだ時感じたんじゃが。2人の手の温度差を利用して絶妙な生地が付くれんかなと思うんじゃ。」

「はい、判りました」

生地の中で 細い指が東の手に触れる。

 

互いの指先が触れる回数が除序に増えていく

 

「あぁっ!んっ!」

 

触れる手の感触に月乃から思わず声が漏れる。

 

「ん!」

 

東からも声が漏れる。

 

思わず2人が上目ずかいになり目と目が合う

 

 その瞬間、部屋の蛍光灯が消える。

停電のようだ

  

     ・本当、びっくりですわ。計ったようなタイミングですね。

・・・・でも、そうか。東さんも同じ気持ちでいるはずですものね。

今、ここには、私だけ。

これは・・・チャンス、ですね。

今なら「和馬さん」って呼んでも、冷やかす人たちは誰もいないわけですし、うん。

 

「あの………

 

い、いきますよ。『和馬さん。』って。

「?月乃?」

「あ、あの、あ・・・」

「え?」

 初めて会った時は、その存在すら気にならなかったんじゃが

最近じゃ月乃と会うと、その瞳が気になり始めた。

 

またしばらくすると、今度はその瞳の向けられている、その先が気になり出した。

 

少し前、その瞳をどうしたらオレに向けてもらえるのか?・・・それが気になり出した。

 

オレは・・・このオレは・・・月乃のことを考えると

こんなに近くに居るのに・・・。 

只のオーナと一従業員の関係として見ているだけだろうか・・・。

 

「月乃……俺  俺……。」


数馬そう言うと、月乃が優しく両目を閉じ月乃の手が東の顔に伸びてくる。

 

同じく東の手が優しく月乃の頬に手をそえる。

 

「私は……東さんの事が好きです……、」


鈍感な和馬でもここまでくれば気が付く。

 

そう言うと、二人は最初軽く、そして次第に舌を絡ませる濃厚なキスをした。

 

月乃と、東が再びお互いに近づく。

 

 

    Fin

 

     続く

 

 

 

     TOP