St Kilda
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Visit Places of 2008 Scotland Tour St Kilda's map
2008/7/8(tue)

”世界の淵”と言われているこの小さな諸島St Kildaに行こうと思ったのはあくまで2回目のOuter Hebrides行きを考えてからのことでした。最初のOuter Hebrides行きではNorth Uistから見ただけで満足でしたが、その後、実際に行った友人の話や写真、絵葉書や映像を見ている内に、機会があればと思っていました。そしてネットで調べている内に、友人が行った頃より状況が変わってきたらしく、かなり気軽に行くことが出来るようでした。
しかし、やはり自然の影響は大きく、日帰りのボート・ツアーは天候によってはキャンセルされるとのこと。よって予備の予約を入れることが出来るとツアーの主催者が連絡してきてくれました。おかげで予定していた日はキャンセルになりましたが、予備に申し込んでいた翌日に行くことが出来ました。

ツアー
スケジュール
08:00-11:20 ボート
11:20-15:30 St Kilda
15:30-19:50 ボート

港へ行くと乗客が集まってきていました。どこから乗るかは聞いていなかったのですが、フェリー乗り場とは異なる桟橋は1つしかないので、そこで良かったのです。ツアーは2つあり、どちらも同じ時刻、同じ料金でした。そして、その2艘の船が仲良く横に並んで待っています。私が申し込んだのはSea Harris(Seumas Morrison氏主催)で向こう側に係留されていました。その船に乗り込むには…手前の船(Kilda Cruises、Angus Campbell氏主催、こちらだけが桟橋に横付けになっている)を通って乗ります。そして仲良く出発。その前に救命胴衣をつけます。全ての服の上で、寒いからと行ってその上にジャケットを羽織っていた女の子は再度つけ直されていました。つけかたがよく分からなかったので適当にしていたら、スタッフがちゃんとなおしてくれました。リュックなどの荷物は船首の部屋に入れるようになっています。私は水を被るのを忘れてレインコートもここに入れてしまい、寒い思いをして、甲板にいました。船室に入ると酔いそうで…かなり、というより、思いっきり揺れていました。

船上(行き)にて
船は港の外へ出ると、スピードを上げてSt Kildaへ一直線に向かいます。波はそれほど高くはないようですが、スピードがあるのでかなり揺れて、潮もよく被ります。ほぼ全員が甲板へ出て外の景色を楽しんでいるのですが、港が遠くなると回りに見えるのは海だけになります。
Leverburgh from the boat
振り返ったLeverburghの眺め
甲板は後部にあり、前方を見るには船室に入って操縦している船長(Seumas氏)の肩越しに見ることが出来ます。
meeting a yachtでも、揺れているのでたまに空だけしか見えないこともありますが…。そんな時に前方に港のブイのように三角の旗みたいなものがゆらゆら揺れていました。こんな大西洋上にブイを浮かべてあるはずもありません。その物体に近づいた時、それがちょっと大きめのヨットであることが分かりました。こちらの方がスピードが速いので追い抜きました。その際に記念にカメラを向けた途端、向こうとこちらで手を振り始めました。私も手を振り、同時に写真を撮るという技、しかも揺れる船の上でです。行きの気晴らしはこれだけ。
片道3時間半近くの航海はさすがに退屈しますが、かといって船室で寝ていられる状況もないので、何とか酔わないように甲板で頑張っていました。甲板での移動や船室の往復などは手すりを捕まるか揺れが少ない時にやっていましたが、それでも船室に行き着く前に急に揺れたりして、思わずスタッフに倒れ込んでしまいました。甲板のスタッフは2人、当然揺れに離れていて、客の動きもよく見ているようで、動きたい時にはよく手をさしのべてくれていました。
arriving Hirta, St Kildaそうやって、いよいよSt Kildaが近づいた時にはホッとしました。とりあえず航海の半分が無事に終わったと言うことです。メインのHirta島に近づいた頃、右手(北)に印象的な島が見えました。これがBoreray島とStac Leeでした。船上から見える景色が変わったことで気分も高まってきました。甲板で声をかけてきた女性が”とっても興奮している”と言っていましたが、私は島に近づいた時にそんな気持ちに変わっていきました。
船は直接島にはつきません。Village湾に係留した後、船につけてあったゴムボートに乗客を移しての上陸になります。勿論、乗客の数とボートの大きさは合いませんので、3往復ぐらいして全員を降ろします。(別のKilda Cruisesも合わせて)全員が上陸し、現地の係からの説明を聞いた後で思い思いの所に散らばります。私は預けたリュックは受け取ったものの、レインコートを船に忘れていました。寒いのを我慢できないので、係に説明したら、船に残っていたスタッフがボートで持ってきてくれました。係はどちらの船か聞いたのですが、その時にツアーの名前でなく船長の名前で”AngusかSeumasか?”と聞いてきました。それほど現地とこの2つのツアーは連携しているように思えました。

一口にSt Kildaと言っても一つの島ではなく、4つの島とその回りに大小の岩礁で成り立っています。最も近いNorth Uistからは56kmは北西の位置にあります。最大の島はHirta島。その西北に2番目に大きいSoay島、南側にくっつく様に一番小さDun島、そして東北に6km離れてBoreray島があります。群島の広さは24,201.4㌶、陸地部分の合計は854.6 ㌶。
  • Hirta島:約628.5㌶
  • Soay島:約96.8㌶
  • Boreray島:約86.5㌶
  • Dun島:約32㌶
  • 6つの岩礁の合計:10.8㌶
聖キルダとは
Kildaという聖人はいません。誤解されて英語名がそうなったとのこと。Skildarという名前(尖った島々と言うよりも盾状の島々という方が適切表現である古代ノルマン語’skildir’から派生)が1540年の記述に残っています。16世紀の地図ではこの群島に対する名前が間違って記されています。その名前(Kelda、古代のルマン語で’井戸’の意)の由来は上陸場所であるHirtaのゲール語名に基づいていると考えられます。古代のルマン語でもゲール語でも単に’井戸’を表すのにもかかわらず、Hirtaは、ノルマン時代より後の時代では’Kildaの井戸’と間違って解釈されたTobar Childaとなりました。
  • Hirta:群島のゲール語名はHirtまたはHiortで、英語名ではHirtaとしてメインの島につけられています。色々な説はありますが、古代のルマン語のhirtir(stags、雄鹿)が1202年以降の記録にあり、おそらく群島の角のような尖った地形に由来したと思われます。古代のルマン語のhjorth-ey(herd island、家畜の群れの島)、古いIreland語のhirt(death、死)はこの遠く離れた群島が西方の異界の入口という意識から由来したと思われます。
  • Soay SheepSoay:’Sheep island(羊の島)’という意味です。古代のルマン語のSauthaは'sheep'、eyは’island'を表します。この名前は羊のSoay種によるものですが、Soayという島は他にも沢山あります。
    Soay Sheepは羊の原型とも言われています。上陸したHirta島でも放牧され、島内を自由に動き回っています。普通の羊よりやや小さく、毛は黒っぽい物が多くいました。
  • Boreray:’the fortified isle(要塞化された島)’の意味です。
  • Dun:’fort(要塞)’の意味です。
Hirta島
Village of Hirta上陸後、Villageの説明リーフレットを受取、説明を受けた後、それぞれ思い思いに歩き回ることが出来ます。嘗ての住居は一列に並んでいます。現在の英国軍の駐留のためなどの新しい住宅もありますが、古い住居は全て石造りなので、間違うことはありません。その住居の間から、上に登ることも出来ます。特に道はありません。a Cleit住居の側や島の至る所にはCleitと呼ばれる石造りの小さい建物(写真左)があります。これは貯蔵のためで、作物などをここに貯めておいたとのことです。住居の屋根はなくなっていましたが、こちらの方はほぼ残っていました。中は当然、真っ暗です。
住居沿いに歩くと、先ず現れるのは白い家。The Factor's House(代理商の家、借地料を集金に来た地主の代理人が泊まった)と呼ばれる家で、現在はNational TrustのScotland警備隊の本部になっています。お手洗いがここにありました。そこから先に進むと展示館があります。この辺りはちゃんと現代的な屋根が補修されて付いています。中は島の住人が本土に移住するまでの生活などのパネルや説明が展示されています。上陸時間は約4時間なので、ここで余り時間を取られたくなかったので、ざっと見回す程度でした。この先にカフェ?らしき物がありました。飲み物があったような気がします。飲み物や軽食は用意しておくようにとのことだったので用事がなかったのではっきり覚えていません。また、住居跡(屋根がない家)には番号が振ってあり、本土移住直前に住んでいた人の名前が書かれています。中は草が生い茂った状態ですが、素朴な作りだったことが伺えました。
港のすぐ側には現在の駐留者達のための設備がありますが、その中には郵便局があります。と言っても、机と係がいるだけですが…そこから絵葉書を送りました。特別な消印を押してくれると確認した後です。その消印はパフィンの絵でした。絵葉書と切手はたまたま持ってきていたので、それを使いました。持ち合わせが無くても販売してくれると思います。
住居跡を一通り見て村の端に到達した時、その上に向かう3人組がいました。村の端にはAbhainn Mhòrという小川が流れています。その小川沿いに登っていきました。暫くして、Mullach Mor(361m)とMullach Sgar(222m)の頂上まで続く道路に出た後、更に上り続けました。この辺りからVillageとVillage湾が一望できます(写真下)。この道路は、舗装されていて、車が通ることが出来ます。警備隊の車です。2つの頂上にはそれぞれ通信塔が建てられています。このための道路です。
Glen Bay and Gleann Mor2つの頂上に向かう分かれ道に付いた所で、北側の海Glen Bay(またはLoch a' Ghlinne)を眺めることが出来ました。南側のVillage湾とは雰囲気が違います。こちらにもCleitがあり、人はこんな所にも手を伸ばしているのか、と感心してしまいました。Soay Sheepも彷徨いています。この日はずっとそうでしたが、山頂には雲がかかっていたので、下を見下ろす所で休憩しました。
どちらの山頂までも行きませんでしたが、それぞれの下は直下にかなり険しい崖があるそうです。そこまで行くと降りる時間が気になってしまうのでやめました。葉書を出したかったので、ちょっとはやめにおりたかったのです。また、雲がかかっていて、眺めが道かな?とも思っていたからでした。かなりの人達は西側の崖の方に行っていたようです。そんなに大きい島ではないのに、観光客達はいったいどこに行ったのか見かけませんでした。唯一見かけたのがお父さんと子供2人の親子でした。この家族は宿も船も同じでした。
頂上に雲がかかっていて上からの眺めはちょっぴり残念でしたが、船から見たその景色は何となく幻想的でした(写真下、中央がHirta島、左側にDun島、右側にSoay島が見える)。
Hirta
Boreray島
Boreray and Stac Lee行きの船上でSt Kildaに近づいた頃右手(北側)にこの島が見えました。荒々しい海に浮かぶ大きな岩の島の映像をSt Kildaとして見ていたのがこの島でした。Hirta島のVillageの写真とこの映像から、こんな所に人が住んでいるの?と思っていたのですが、ちゃんと調べたら、なるほどSt Kildaが群島であり、異なる島であることがはっきりしました。それほど、その映像が強烈だったのです。
Stac LeeBoreray島をもっとちゃんと見たいと思い、帰りの船でも眺められるのは確かだったので、一生懸命北側を眺めていました。ところが、いっこうに見えません。幻ではないので、?と思って前方を見ると、何と目の前にStac Leeがそびえ立っていました。ツアーはHirta島に上陸させるだけでなく、こちらも上陸はしませんが、かなり時間をかけて見せてくれます。
Stac an Arminそして、Boreray島とStac Leeの間の海を通って進みます。その先にはStac an Arminが海から突き出ているのが見えます。この辺りは島と岩礁の間のためか、波がひどく甲板に立っているのが精一杯です。
Stac an Arminに近づいた後、Boreray島を一回りします。島やスタックには無数の海鳥がとまったり飛び回ったりしています。そして再び島の西側に進みます。そこで今度は波間に浮かぶパフィン(ツノメドリ)を見ます。他の客達がパフィンが見える側を占拠してしまったために、私が入る余地が無くなり、何とかパフィンを確認する程度になってしまいました。Staffa島で間近に見たことがあったので、そんなに必死になる気がしなかったためです。泳ぐパフィンを見ることが出来たかも知れませんが。
そして、名残惜しいSt Kildaを後にして、帰途につきました。

船上(帰り)にて
Dolphins帰りはまた回りに何もない海が広がって、退屈な状況でした。例のお父さんが連れていた子供2人(お姉ちゃんと弟、Sweden人らしく、お父さんしか英語を話さなかった)は船酔いらしく甲板にダウンしていました。私は忘れずにレインコートを着たので寒さは防ぐことが出来、ずっと甲板に立っていることが出来ました。おかげで船酔いの心配はなくなりました。そうやってかなり時間が経った頃、スタッフが船室から飛び出てきて、ダウンしていた子供を立たせながら”whaleだ”と言いながら海のある所を指しています。他の乗客も一斉にそちらへ向かいます。私はまた出遅れて、そちら側を遠くから眺める形になってしまいました。そして見たのは”イルカ”でしたが…何頭もいるのです。その内の数頭が、私が見ることが出来るよう(?)に船の後ろに来てくれました。船上にいる全て人間達を楽しませているようでした。そしてダウンしていた子供達は船酔いが治まったようで、その後はずっと立っていました。イルカって、姿を見せるだけでも癒しになるのね。イルカがいるだろうと船はわざわざそちらに向かったようです。おそらく、何もない所で海鳥が舞っている所がイルカがいる可能性があるのでしょう。
a Whaleその後、Leverburghへの航路に戻ってこのまま一直線かと思ったのですが、Harris島に近づいた所で再び船がスピードを落としました。”小さなクジラがいる”とのこと。今度は正真正銘、”クジラ”です。1頭だけで、背びれを水面から出して泳いでいました。クジラにも詳しくないので、どんな種類のクジラかは不明ですが、これが泳いでいるクジラを最初に見たことになります。船はエンジンを切って、クジラが船の周りを半分回った所で、再び動き出しました。
この2つはツアーのおまけです。ツアーのリーフレットには運が良ければイルカやクジラに出会うかも知れないと書いてありましたが、運が良かったのね。もう一方のツアー(Kilda Cruises)はその時見ていないので、もしかしてSea Harrisだけのサービスかも知れません。Leverburgh港に着いたのもかなり後だったように思います。
港に到着後、料金を支払います。私は現金で払いましたが、殆どの人がチェック(小切手)でした。クレジットは使えない?様です。これだけの料金なので、現金というのはあまりいないのでしょう。田舎なのでそんな金額を用意しておくのも大変なのですが、他にどうしようもありませんでした。私の場合は免除してくれましたが、予約の際には保証金が必要です。
2つのツアーがあって、同じ料金、同じコースならどちらを選ぶかという判断が要ります。私はネットからの申し込みがしやすいように思えたのでSea Harrisを選んだのです。船の大きさはKilda Cruisesですが、スタッフはSea Harrisの方が若そうです(関係ある?)。どちらにしても、事前予約をしておいた方が良いでしょう。天候でキャンセルになる場合もありますので、余裕を持った日程が必要です。

  1. Visit Hebrides(英語):Hebrides諸島のValley Tourist Boardのページです。
  2. Sea Harris(英語):St.Kildaへのボート・ツアーのオフィシャル・サイトです。
  3. Kilda Cruise(英語):St.Kildaへのもう一つのボート・ツアーのオフィシャル・サイトです。