【ひむあり子育て日記】・・ママってぜったいかあいいー 

6月23日 アリスSIDE                      
    
 つわりがおちついてきたら、ちゃんとお披露目をしようという話しが盛り上がっているとか。
なんだか、みんながとても好意的で恐いくらいだ。
 でも、やはりさすがに、式場をとるのはやめてくれと婆ちゃんに火村は泣き付いたらしい。
 俺でもそうする。

 第4話  結婚式

「綺麗だよ。アリス」
 面と向かってそんな事を言われて、どうしたらいいのかわからず…思わず口をついた言葉は『あほか…』。
 それが、今から二人でみんなの前に出ると言う場面での会話。
 ムードがないというか、なんというか‥。
 ただし手には、朝井さんの悪乗り、というか…愛というか…で用意されたウェディングブーケを持っている。
 さすがにドレスは勘弁してもらったのだが。
 
 緊張感なんてない。
 なんだか肩の荷がおりてほっとしているっていうのがお互いの想い。
 男同士だから…と隠していたトップシークレット。
 もう、それがなくなってしまった。
 その上、みんなの祝福まで貰えるなんて…。
「なぁ、火村」
「ん?」
「俺。この子らにものすごく感謝してる‥。この子等のおかげでみんなにちゃんと話出来て、こうして祝福してもらえて‥」
「あぁ、そうだな」
 まだ目立たないお腹の上で二人の手が重なる。
「幸せになろう」
 ん、とうなづく目から伝った涙に唇を寄せた新郎は、そうっと花嫁を包み込んだ。
 さながら、宝物を抱くように。

7月4日  火村SIDE

 昨日はあまりに興奮して眠れなかった。
 …なんて俺が言っても似合わないが…。
 アリスと共に生きていく。それは前々から当然の事だった。しかし、こうして人の輪の中でそれを確認出来るとやはり感慨もひとしお。
 幸せにしてやりたいなんておこがましい事は思わない。
 共に幸せになりたいと思う。誰かと共に生きていける、その素晴らしさをこれから十分堪能させてもらおう。
 アリスのご両親からも手紙を頂いた。
 祝福と共に『一度顔を見せに来るように』と。
 夏休みに入った頃にはアリスの調子も落ち着くだろうから、一度ちゃんとあいさつに出向かねば…。
 その前にここの改装。ばあちゃんが子供も出来たら手狭だろうからと、となりの部屋の壁をぶちぬけと‥。業者にはもう手配したそうだ。
「どうせ、もう誰も下宿させたりしないんやし。全部いいように使ってやって。結婚祝いのつもりなんよ、これでも‥。もう、私の楽しみなんやから邪魔したら承知しません」
 その言葉にアリスは感激して、ばあちゃんに抱きついて泣いていた。
 ということで、明日から工事に入る。一週間程は夕陽が丘に避難して、その後共に京都へ戻る予定。
早起きをして仕事に通わねばならないが、それもまたいい記念になるだろう。

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