【ひむあり子育て日記】・・パパとママっていままで「かよいこん」だったらしいよー。

7月18日   アリスSIDE

昨日は引っ越ししてきてから初めての休みだった。
日記を書けなかったのは、あまりに世話焼きの誰かサンのせい。
研究熱心な性格なのはよくわかっていたが、妊娠についての医学書を図書館からたくさんかりてきて、安定期迄は重い荷物は危ないとか、まぁ、色々…。
心配は嬉しいけれど、過保護すぎる。
そのうち、箸さえも持たしてもらえへんのちゃうやろか。
お姫さまみたいや・・って冗談はさておき。
でも、こんなんしてたら太ってまうぞ!
適度な運動は必要だって今度、先生から釘さしてもらおう。
7月21日   火村SIDE

返却期限が来ていた本の再度貸し出しを図書館で申し出たところ、
「あの…先生、失礼ですがどなたかおめでたですか?」なんて興味津々の顔で聞かれたので、正直に答えておいた。
「えぇ。うちのやつが」
そう、家に帰ればアリスがいる。
このところ調子はいいといっているが、無茶してないだろうか。
重たいものを持ってはいないだろうか。心配になってきた。
男と女は違うだろうから一概には言えないが、本に寄ると安定期までは油断大敵らしい。婆ちゃんがついてくれているので安心はしているが…。


第6話 新婚報告−その1−(爆)

 火村の家に、いや正確には篠宮家の2階にアリスが嫁入り(笑)してきて3週間あまりがたとうとしていた。
「それにしても有栖川さんも大変やねぇ」と、洗濯を干しながらばあちゃんが苦笑する。
「火村ですか…?」
「全く…世話好きなお方とは思うてましたけど、あそこまでいくと息詰まりますやろ」
「そうですねぇ。もし、ここに居てたら洗濯も干せへんでしょうねぇ…」
 なんて、会話の源はもちろん旦那の溺愛ぶりにある。
 過日の引っ越しの準備と以前から決まってた原稿の締切があって、結構忙しく過ごしたアリスが『ちょっと疲れ気味』と検診の際に口にしたところ。
『とにかく身体を休めて、平穏な気持ちで…暮らして下さいよ。体力も精神も安定していることが母体にとって一番ですから』なんて有り難いアドバイスを受けてしまったのが、運のつき。
 以来…、夏休みはもちろん休みといっても仕事はあるはずなのに、必要最低限しか大学にも行かない火村ときたらそれはそれは献身的で。
 昨日など一日中、傍を離れる事もなく。
 荷物を持って歩けば、
「危ねぇな、俺が持ってやるから!」と取り上げ。
 掃除を始めれば、
「転んだりしたらどうするんだ」と座らせて。
「こんなんしてたら、ヒマで死んじゃうよ〜〜〜」
 火村の余りの過保護ぶりに、思わずアリスは悲鳴を上げた。
「でもな・・・」
「そうですよ、少し身体を動かす方がいいぐらいですわぁ。なぁ、有栖川さん」
 婆ちゃんの助け舟に救われて、『そうや、そうや』と言い返す。
 火村は仕方ないという風に大きくため息を吐いた。
「・・・なら、家事で疲れた俺の肩を揉んでくれ」
「・・・・・」
 結局、折れるつもりは無いらしい。火村の心配性は相当重傷のようだ。
 拗ねたように唇を突き出したアリスに、婆ちゃんはくすくすと笑いを漏らしたのだった。
「その子らが産まれたら…、どうなりはるんでしょうなぁ」
 ほんの少し膨らみはじめた腹に婆ちゃんがちらりと目を向ける。
「…超親馬鹿でしょうねぇ」
 ふぅっと溜息をつきながらも、家族愛に充たされずに居た男にとってはそれはそれで幸せな事だけど…と内心アリスは呟いていた。

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